川辺の道。
渉と真央が出会った川。
二人は川辺を歩いていた。
「……真央」
先を歩いていた渉が振り向いた。
真央は俯いていたが、少し顔を上げた。
「ごめん」
いきなり渉が頭を下げた。
「え?渉くん?どしたの…」
真央は慌てて渉の傍に寄り、顔を上げるよう促す。
暫く経った後、渉が顔を上げた。
「ごめんな、真央」
申し訳なさそうな渉の顔。
真央はぶんぶんと首を振った。
「ううん。というか…何で謝るの?」
真央には何がなんだかわからなかった。
何故渉が謝るのか。
渉は目を泳がせた後、言いづらそうに口を開いた。
「俺、あんたのこと、最低な女だと思ってた」
ずきん。
胸が裂けるような音がした。
「俺もそんなこと言えるほどまともじゃねーけど…高校のこと言われて、正直、悲しかった」
やはりあのことが。
真央は泣きそうな心を精一杯押さえた。
「だけど…本当のこと、聞いた」
「え?」
「兄さんの、こと」
お兄さん。
真央の表情が変わる。
「知らなくて、冷たいこと言って、ごめん」
渉はまた頭を下げた。
そのせいで真央の顔は見えなかったが、真央が泣いているのだけはわかった。
「また泣かせちゃったな…」
ばつのわるそうな顔。
真央は涙を拭きながら、小さく首を振った。
「違うの。ごめんね。ただ、嫌われたかと思っ、て…」
泣き出す真央を、渉は優しく抱き寄せた。
「嫌いになんかならねぇよ」
華奢で細い身体を強く抱きしめる。
「俺が、真央を守るから。だから、心配しないで」
腕の中で真央が頷いた。
守るから。
俺は真央を守ると決めた。
この小さな真央を。
