近くにあった喫茶店に渉は連れて来られた。


「まず自己紹介からすっか。俺は彼方良平。青蘭学園の保険医だ」





青蘭学園。







真央……。





「そして真央の叔父でもある」




飲もうとしていた珈琲を吹き出しそうになった。


「叔父!?」


「そ、叔父。俺の兄さんの子供が真央」


新事実に驚きを隠せない。

大きく瞬いて、渉はカップを置いた。


「まあそんな驚くなよ、本題はこれからだ」


彼方は頼んだ紅茶を一口含んでから話し出した。


「お前真央を泣かせたらしいな」


単刀直入、ずばり言われる。



一瞬、背筋が伸びた。



「大丈夫だ。そんなこと怒ってるわけじゃない。なんであいつが泣いたかだ」


「……それは、俺が怒ったからだろ」


「なんでお前は怒った?」



怒った理由?



あの時の会話を思い出してみる。




―――ごめんなさい。



―――何、どうしたの?








―――渉くんって、星南高校だよね。






「あ」





そうだった。



星南高校。そのことを言われて腹が立ったんだった。



「お前は真央がそういうことだけでお前を判断したと思ってるな?」



その通りだった。



それが悔しくて悲しくて、ひどく自分が情けなかった。



「真央はそんな子じゃない」



伏し目がちに、小さく彼方かが呟いた。



「真央が泣いた理由は別にある。お前のせいじゃない」