「父さんっ! 何言ってんだよ!」
あたしと同じように、
お兄ちゃんも身を乗り出す。
「陸斗の気持ちもわからんでもない。
父さんも最初は反対だった…。
でも、今思うと、
椎菜にお願いされたのなんて、
いつ以来だろうって……」
――……お父さん。
「椎菜にはいつも我慢させた。
昔は、父さんの収入も安定して
なかったしな。
知ってるんだぞ。
椎菜がピアノやりたかったこと」
「え…っ?」
なんでお父さんがそれを?
…確かに、保育園の頃、
先生が弾いてるを見て、
やりたいと思ったけど。
うちにピアノを買うお金がない
ってことくらい、
小さいあたしにもわかってた。
だから、お母さんにもお父さんにも、
何も話さなかったはずなのに…。
「それに、ギターもほしかっただろ?」
なんで知ってるの――……?

