「そろそろ・・帰ろうか?」



木村さんがグラスの中のハイボールを飲み干して言った。




時計を見るともう12時を回っていた。




「もうこんな時間になってたんだ・・・もっと木村さんと呑みたかったなぁ」




あたしはポツリと言った。




本当なら、それは心の声・・としておかなきゃいけないんだけど、お酒が回ったあたしはそんな心の声を口に出していた。




「コラ!優子!!そんな可愛い事を言ってると帰したくなくなるだろ??」



「ハハハハ・・・木村さんだってそういうことは素面の時に言ってください♪」




木村さんはいつの間にかあたしを《優子》と呼ぶようになっていた。




あたしはそれがなんだか、くすぐったくて、距離が縮まった気がして嬉しかった。







木村さんがお会計をしてくれて、店の外でエレベーターを待つ。




「ご馳走様でした・・奢っていただいて・・すみません・・」




「優子。そういう時は《すみません》じゃなくて《ありがとうございます》って言ってもらえると俺的には嬉しいんだけど?」




「あ・・そっか。ありがとうございます!!木村さん!」




あたしは木村さんに愛想笑いではなく、本当の微笑を向ける。





「あぁぁ!!もぉ!!」





木村さんはそう言うと、あたしを引き寄せ腕の中にあたしを閉じ込めた。