ヒトノモノ




「・・世間体??」



「そう。嫁が昔付き合ってた俺のツレが亡くなって、俺と結婚してって話しただろ?」



「うん・・」



「自分の傍からツレが居なくなって、今度は俺が居なくなって・・っていうのが嫌なんだとさ。大学時代のツレとかに哀れに思われるのが嫌だって・・」




「・・・そんなの・・・」



「・・近所の目も気にしててさ。最近俺が家に居ないのがそろそろ気付かれたみたいで・・
それに、アイツ・・働いた事もなくて今の楽を知っちゃってるから、生活水準を落としたくないって・・・」




「・・愛情なくてもいいから、世間体とお金を守りたいって事??」



「そういうことみたい・・」



「それは・・はい、わかりましたって納得できるものなの??自分の人生なのに・・・」



「・・・納得なんてしてないし、出来ない。でも・・俺が道理外れて不倫してるのは事実だから・・・」






あたしは、納得がいかなかった。




奥さんは、啓介が好きで一緒にいたいわけじゃないんだ・・・




自分のプライドの為だけに啓介と一緒にいたいんだ・・・




そして・・・今朝電話にでたのは・・・女としてのプライド・・・




この間、田中君とランチした日・・・




奥さんと擦れ違ったときのあの視線・・・




今思えば、アレは女のプライドが表立っていた。