ヒトノモノ






「昨日は奥さんと寝たんですか??」




「は?!寝るわけないだろ??なんで?」




「奥さんは《隣で寝ています》って言ったてから。」




「あれは・・俺がリビングのソファーで寝てしまって、朝起きたら嫁が隣に立ってただけだよ!!」




「・・・そう・・・じゃぁ、なんで家に帰ってこなかったの??」




「嫁と話し合いしてたらどんどん時間が過ぎていって・・・気がついたら夜中の3時で。さすがに眠くて寝てしまったんだ・・・ごめん・・・」




「・・で?話し合いはできたの?結論でたの?」




「いや・・出てない。金を渡してくれないんだ・・・」




「奥さんは啓介に帰って来てほしいんだ?」




「・・・嫁は・・・帰ってこいって。」




「・・そう・・」





あたしは啓介の目から視線を外した・・・





啓介の首元には見たことのないネクタイが巻かれていた。




「・・趣味わる・・」




「・・へ?」



啓介はあたしの口から出た言葉に反応する。




「そのネクタイ趣味悪すぎるね。奥さんの趣味?」




「・・あ・・家にこれしかなくて・・・」




「奥さんはそういうネクタイで啓介を縛り付けたいんだ??」





「・・優子・・・」




「奥さん、啓介のこと愛してるんじゃない?」




「いや・・それはない・・・昨日はっきり言われたから。」




「なんて?」




「あなたの事は好きじゃない。って」




「じゃぁ、なんで・・・」




《じゃぁ、なんで別れないの》と言いたかったけど、語尾は濁した。




「・・世間体だよ・・・」



啓介は髪をクシャっと掴んで言った。