ヒトノモノ




電話を切ってから、頭の中を整理しようとする・・・




でも、何から順に考えたらよいかわからず・・・




携帯を持つ手が冷たくなって、嫌な汗をかく。






啓介に裏切られた・・・?




その事があたしを苦しめていた。






・・・あ・・・仕事行かなきゃ・・・





こんな時に仕事なんて行きたくもない。





でも、啓介に会いたくないという気持ちはない。





むしろ逆で・・・啓介に会って話がしたかった。





冷静にちゃんと話が出来るかはわからないけど・・・





とにかく今朝の出来事を啓介の口から聞きたかった。





あたしは着替えて、仕事に出かける用意をしながら心を落ち着かせていた。





頭の中は・・・





奥さんの声、奥さんの言葉で埋め尽くされる。





いつの間にか、怒りの矛先は啓介にではなく・・・





あの奥さんに向いていた。







あたしより、顔もスタイルも悪いくせに・・・





まともに挨拶も出来ないくせに・・・





啓介に愛されてないくせに・・・






女のプライドが先走ろうとしていた。