ヒトノモノ



翌朝。




ソファーで寝てしまったからか、身体中がダルイ。




あたしはまた啓介に電話を入れた。




・・・プルルルル・・・プルルルル・・・

・・・プルルルル・・・プルルルル・・・




繋がる!!!




コール音がして、手が震えるほど安心した。





ガチャっという音にあたしはすぐに反応した。




「啓介?!?!」




「・・・・・・」




「啓介?!どうしたの?!」




「・・・どちら様?こんな朝早くに」





その問いに答えたのは啓介ではなく・・・奥さんだった。





この間、見かけた奥さんのイメージとは違って、とてもトゲのある口調だった。





「・・あの・・あたし・・・」




「《あたし》は誰?家の主人のなんですか?」




《うちの主人》・・・




その言葉は、あたしを《愛人》と簡単に位置づけた。




あたしは言葉が出なかった。




「啓介に用事なんです。啓介に代わってください。」




「主人ですか?主人ならまだ隣で寝てますけど?」





・・隣で寝ている・・?




どういうこと??寝室は別だって言ってたじゃない??




すると電話の向こうから、啓介のうなり声と、寝起きであろう啓介の声が聞こえた。




「・・のぞみ・・?それ、俺の携帯じゃ?」





・・奥さんの隣で寝てたの?




なんで??




あたしに言ってた事は嘘だったの??






あたしはそのまま電話を切った。