ヒトノモノ




「・・・にしてもさぁ、木村さんの奥さん・・想像してたのと違ったなぁ・・・」




田中君がステーキを頬張りながら言った。




「そう?上品だったよね・・」




・・妥当な言葉はそれくらいしか思いつかない。




たいして綺麗でもなく、地味で、暗くて。挨拶もろくに出来ない・・・




完全にあたしは奥さんを見下していた。




もし、物凄く綺麗で人当たりもよかったら・・・きっとあたしは嫉妬に狂っていただろう。




でも、違った。




自然と笑みがこぼれる・・






ただ・・・許せなかった事が一つ。




啓介の財布を当たり前のように受け取った事。




仮面夫婦のくせに・・・




良妻面しちゃって・・・




啓介も啓介だ。




なんで渡す必要がある??友達の手前だから??




なんで俺たちはうまくいってますよ・・みたいな真似しなくちゃいけないの??