ヒトノモノ



啓介があたしの部屋で一夜を明かした日、啓介はその日の夜遅くまであたしの傍にいてくれた。



二人でランチに出かけて、スーパーで買い物をして、一緒に夕飯を作って食べる。




一緒にお風呂に入り、愛し合う。




こんなに一緒にいたことは初めてで、何もかもが新鮮だった。




でも。楽しい時間はあっという間に過ぎていく。




さすがに連泊は無理だろう・・というのはわかっていたから、無理矢理引き止めることはしなかった。



「じゃぁ・・そろそろ行くわ」




「うん。」




玄関先で、いつものように触れるだけのキスをする。




あたしは啓介から離れようとするが、啓介のあたしを抱きしめる腕がギュっと強くなった。



触れるキスからしだいに深いキスへと変わっていく。




唇が離れた時、啓介がはぁ・・・とため息をつく。




「・・俺・・・帰りたくないわ。ヤバイな・・・」




「ダメだよ。今日は帰らないと・・・」




あたしはわざと突き放すようなことを言った。



昨日は《帰らないで》なんて言ってたくせに・・・





「俺・・・これから金曜日はココに泊まるから・・・」




「・・え??」




「今日、めちゃくちゃ楽しかったし・・・幸せだったし・・・優子ともっと一緒にいたいから・・・。迷惑・・か?」




「・・迷惑だなんて。逆に嬉しい・・じゃぁ、啓介のお泊りセット用意しとかなくちゃね♪」



「そうだね。また少しづつ持ってくるよ。」





そう言って、啓介は帰って行った。