ヒトノモノ



次の日。




あたしは普段通りに会社に行き、仕事をこなす。




時々、向かいの席から視線を感じるけれど、あえて気付かないフリをする。




今日に限って、あたしが啓介に仕事の話をしにいくことはなかった。






昼休み。




京子とランチの最中に携帯が鳴った。




・・・啓介から着信・・・




珍しいこともあるんだ??




あたしは昨日の事もあったから、その着信を無視した。





「そういえばさぁ、最近木村さんってますますカッコよくなったよね??」




《木村さん》って言葉にドキッとする。




京子はあたしたちの関係を知らない。




「そ、そうかなぁ?あたし、あんまり興味ないから・・」



・・興味ないなんて・・興味どころか好き過ぎてるくせに。



「うん。なんか、雰囲気が前よりも良くなった気がする!!ありゃぁ、女でもできたかな??」



京子はニヤっと笑った。




「女って!?木村さん、結婚してるんだよ??」




「やぁーーねぇ、優子。今時、不倫なんて当たり前の話だよ??」




「え?!そうなの?!」




「そうそう。普通の話。最近じゃ、主婦が不倫してるのも当たり前なんだから♪昼ドラ効果だろうけど・・・」




「へぇ・・・」




正直・・・後ろめたい気持ちでいっぱいだったけど、京子の話を聞いてすこし心の中がすっきりして軽くなった。