ヒトノモノ




啓介に抱かれると心も身体も啓介でいっぱいになる。




啓介と繋がっている時間が、ホントにホントに幸せで・・・




あたしは、これ以上何も求めないし・・・何も要らない・・・




ただ、啓介だけが傍にいてくれたら・・・




啓介もそう思ってくれてる?




ねぇ・・・啓介?




あたしは、あたしの上であたしの中で啓介を感じながら・・・




いつも心の中で啓介に問いかけていた。









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啓介と愛し合ってから、2杯目のコーヒーを飲んで、ふと時計を見ると10時を回っていた。




「じゃぁ・・俺そろそろ・・・」




「・・うん。気をつけてね」




「あぁ・・」




あたしは啓介の首に腕をまわす。




啓介もあたしの腰に腕を回してくる。




そして玄関先で軽くチュっと唇を合わせる。






・・・帰したくない。




思わず口からでそうな言葉・・・




それをグッと飲み込んで、あたしは微笑む。




「じゃぁ、またね・・・」




「あぁ・・また・・・」





啓介はそっと玄関のドアを閉めた。





「またね・・・」とは毎回言ってくれるけど、「また明日ね・・・」とはお互いに言わない。




会社では毎日会っているんだけど、そうではなくて・・・




「また明日来てね・・・」「また明日来るから・・・」が約束できないから・・・






啓介がいなくなった部屋は、啓介の香りまでなくなっていった。