けれど、相手は隙なく恵理夜をエスコートし、ダンスホールに連れてきてしまった。


――そして、音楽が始まってしまった。


「一曲、お相手願えますか、お嬢様《レディ》?」


ここまで来て、断っては相手に恥を掻かせてしまう。

恵理夜は、お嬢様らしく毅然とした態度で右手を上げた。


「失礼、私が先約ですので」


――別の手がその右手を取っていた。