――春樹は、完璧な執事であった。

武術・知識・料理にピアノまで嗜み、あまりの完璧さに恵理夜の機嫌を損ねさせたこともあるくらいだ。

その、春樹にも出来ないことがあったとは。

恵理夜の言葉を避けるように去った春樹の行動にも合点が行き、恵理夜は、噴出していた。


「貴方にも、弱みがあったのね」


春樹は、本当に申し訳無さそうに頭を下げていた。

しかし、ようやく得られた微笑を喜んでいるようでもあった。