お嬢様の苦悩。

「お客様、大丈夫でございますか?」

「はい、驚かせてしまって申し訳ございません」


駆け寄ってきたスタッフに、驚かせた本人である春樹がしゃあしゃあと謝罪していた。


「何よ、これはっ」


恵理夜は、困惑と怒りと呆れをない交ぜにしたような顔で春樹に封筒の中身を突きつけた。


「5円玉に輪ゴムを巻いて厚紙に取り付けたものでございます」


至極真面目な顔のまま、春樹は言う――が口元が痙攣しているのがよくわかった。


『さそりの卵』などの名称で呼ばれたおもちゃだ。

封筒を開けると、ねじりを加えられた輪ゴムが開放されて封筒の中から「がさがさがさ」と音が飛び出すのだ。

手が込んだもので、小さな紙吹雪まで飛び出してきていた。