春樹は、その傷口に唇を寄せた。


「やめなさいっ」


恵理夜は、とっさに手を引こうとした。

しかし、春樹はそれを許さない。


「駄目、それだけは駄目よ。離しなさい、春樹っ」


恵理夜は、怯えきった目をしている。

春樹にではなく、春樹を失うことに対しての怯えだ。

二人は、病名は違えど血液の病を患っている。

薬で抑えてはいるが感染症などには敏感だった。

その血液を含んで、感染症にでもなったら春樹は――


「……貴女の為ならば」