「どうやら、主人がご迷惑をお掛けしたようで」


春樹は、恵理夜の一歩前に出て少女にハンカチを差し出した。

少女は、きょとんという表情を見せてから小刻みに首を降った。


「いやいや悪かったのはこっちですからっ。でも、お心遣い嬉しいです。ありがとうございますー」


くるくると、さまざまな表情を見せてから、最終的に遠慮しながらも受け取ろうとした。


――つい、とその手を少年が引いた。


そして小さく少女の耳元に何かを囁くと微笑みながら恵理夜達に向き直った。


「今度は一瞬たりとも目を離さないようにします。僕達の件でお気を悪くなさらず、良い時間をお過ごし下さい」


冗談を言うような明るい口調に完璧な微笑。