お嬢様の苦悩。

そして、庭園に降りたとき――倒れている少女に少年が駆け寄っていた。


恵理夜は、ぶつかったそのままで立ち尽くしていた。

ゆっくりと立ち上がらせてもらう少女をじっと見つめている。


自分には差し伸べられない手を見つめる孤独――春樹は、それを痛いほど知っている。

恵理夜は、両親を幼い頃に亡くしてからずっと、自らの力で起き上がってきた子供だった。

泣きもせず、淡々と孤独に耐え、自らの力で起き上がるその姿は、美しく――同時に胸を締め付けるような切なさを、感じさせた。


春樹は走った。

その恵理夜に、手を差し伸べるために。