――春樹に注がれた目線と、目が合った。


恐らく、恵理夜よりは年上であろう少年の目線だった。

苛烈な視線が向けられているのが、相手の黒のドミノマスク越しからでも伝わった。


「……?」


恵理夜と目が合った途端、相手の視線が驚きに染まるのがわかった。

そして、素早い動きでパートナーであろう少女と、恵理夜の視界から消えた。


「いかが致しました?」

「見失ったわ」


その顔には、強い不安と警戒の色が残っていた。


恵理夜は、組の組長《カシラ》である祖父の言葉を思い出した。

――『純粋に、全てを楽しんで来なさい』

仮面をつけているのに、こんなにも警戒をしている自分が果たして楽しんでいるといえるのか――と、顔を伏せた。