「お互いが離れたら、すぐにわからなくなりそうね」

「大丈夫ですよ」


春樹は、恵理夜の背中からそっとその髪に鼻先を寄せた。


「私は、貴女を見失いません」


振り向く恵理夜の髪がふわりと舞う。

その髪からキンモクセイのような上品な香りがふわりと舞った。


「早速、着けてくださったのですね」

「気づいていたの」

「気づかないはずがありません」


それは先日、春樹が恵理夜に贈った香水だった。


「私を、見失わないでね」

「貴女が、望むなら」