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『キミにはアマレットなんて似合わないな。ニホンシュでも、飲んだら?』
楽園の海のような青い瞳の綺麗なオトコが声をかけてきたのは、いつのことだったか。
あたし、アオチュリーナは、探偵団のボス:ポッコラ監督に命じられて、宿敵:怪盗レッカを追いかけ、日本からここミラノにやってきた。
シックにプラダを身に纏い
肌を飾るは、ラ・ペルラ。
ジミー・チュウからフェラガモのパンプスに履き替え、すっかり見も心もミラネーゼに変身していた… つもりだった。
なのに、夜のバールで
見ず知らずのオトコに
そう、声をかけられたのだ。
“ニホンシュでも、飲んだら?”
――――…
いきなり、正体を暴かれた気分だった。
内心、冷や汗が止まらなかった。
探偵として、
ルーツを探られることは致命的だから。
―――… どうして、そんな事を言ってしまったのか、わからない。
『……ニホンシュより、あなたが飲みたいわ。』
どうにか、話題を逸らしたくて
悟られたくなくて
ポーカーフェイスで返したとんでもない一言に
ちょっと驚いた顔をして
でも誘いに乗ったのはアイツの方。
でも、後悔したのは
……あたしの方、だった――…



