BLUE





「ブルータス…」



それは、ここミラノで出会った

目下のところのあたしの、恋人。





「アオチュリーナ、待たせたね。」




深いムスクの香りが鼻腔を刺激する



揺らめく青い瞳が印象的な

あたしの心を捕らえて離さない男―…ブルータスだ。


















「キミの美貌に」


「アナタの瞳に」






ミュウミュウに別れを告げ

場所を変えてグラスを傾ける。


外で立ち飲み。

日本では考えられない恋人の夜も、もう慣れっこ。



こんなセリフ、舞台がラテンじゃなきゃとても恥ずかしくて言えやしない。




だけど、不思議ね。


この空気、この雰囲気。

濃いやりとりをしないと、負けてしまいそうになるんだもの。



青い夜の 甘い誘惑に。







「ねぇ、初めて会った時のことを、覚えてる?」

「……え?」


「あなたったら、あたしの飲んでるお酒を取り上げたのよ。」

「そうだっけ?」


「そうよ。覚えてないの?」

「過去は、忘れる主義なんだ。」


「都合のいいオトコね。」

「アオチュリーナほどでは、ないよ。」


「……どういう、意味かしら。」





こうやって、言葉のやりとりで

内面をくすぐってくる、このオトコが好きだ。




あたしたちは

お互い―…正体を 隠してる。