2011/03/01 at Bar in MILANO
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「あぁ、もう!悔しいったらないわ!!」
飴色の光がカウンターを照らし、人々はワインを片手に陽気に語り合う。
ザワザワと騒がしい夜のBar(バール)。
アマレットのグラスをドン!とカウンターに置くと、隣に立っている女がため息を漏らした。
「結局、怪盗レッカの奴、ミラノに来てから一度も姿を現さないじゃない!本当にこの街にいるんでしょうね!?」
「―…あんたは、少し単純過ぎるのよ、アオチュリーナ。」
「なっ……」
「怪盗の思うツボよ。ボスも嘆いていたわ…」
「ミュウミュウ…」
「ボヤボヤしてたら、あたしが先に捕まえちゃうから。」
「―…あんたには、負けないわ!」
「ふふふ、その意気。せいぜいがんばって。」
アーモンドの香りと共に
心地良く喉を過ぎゆくアマレット。
深夜1時を過ぎても、この街は元気だ。
国も君主も幾度となく変わってきた血の歴史と、最先端のファッションが混在する街、ミラノ。
ここ北イタリアの中心都市で
豪奢なゴシック建築と、雑多で温かい人々に囲まれて過ごすうち、あたしもすっかりミラネーゼになってしまった。
「こらー!怪盗レッカ!出てこーい!!」
「ちょっと、もうその辺にしときなさいよ、あおーちゅ…」
「あたしは、“アオチュリーナ”よっ!!」
ミュウがあたしの肩を抱こうとした、その時だった。
「おやおや…。シニョリーナ(お嬢さん)。今夜も、元気そうで何よりだ。」
あたしの大好きな
甘いバリトンが、耳元で囁いた。



