◆ ―――…ほんとうに、この作品がターゲットなんだろうか。 怪盗は、なんでも盗む。 だから“思い込みは禁物”だ。 闇の中にくっきりと浮かぶその大作の 白い布をかけられた食卓を目に映しながら、ぼんやりと考え込んでいた。 夜の冷気と石の壁が 酔いを醒ましてくれるよう。 ――― コツン ――― 靴の音が、響いた気がした。 一瞬、身体に緊張が走る。 「だ……誰っ!?」 誰、なんて。 聞かなくたって 靴音だけで分かってしまう自分が、嫌になる。 艶やかなバリトンが、高い天井に木霊した。