ああ、そういえば優奈は蓮にクッキーあげたんだっけ。

 「純情だねぇ。」

 「…叶わない恋なんですけどね。」

優奈はそう言って寂しそうに笑った。

なんでそんなこと言うんだろう?
まだわからないのに。

 「あ、男子練習始めたよ!」

うちの男子達がBコートで打ち始めた。
最初は3コースで乱打といったところだ。

 「優奈、よく見ておきなよ。」

 「う、うん。」

蓮を見つめる優奈は恋している女の子って感じ。
それに比べてあたしは…。

 「あ、優奈。
  タオルって持ってきてる?」

日花梨先輩、なんでそんなこと…?

 「あ、一応。」

 「それ、基山がコートから出てきたら渡
  しなよ。」

 「え!?」

ああ、マネージャーとかがやるアレか。
ベタだなぁ。

 「いや、でも…。」

 「照れちゃダメ!
  一歩前進しなよ?」

優奈は何も言わないで小さく頷いた。

 「さ、あたしも海斗のこと見てようか
  な?」

結局、あたし達3人は開会式まで男子の練習を眺めていた。