テニス以外のことでも、あたしは少し…
ほんの少しかもしれないけど成長できた
と思う。

 「愛華ー、中島達の部屋でトランプし
  ない?」

 「先輩、あたし…。」

日花梨先輩が無言で頷いた。

 「ゴメン。行っておいで。」

 「すみません。
  終わったらそっちに向かいますね。」

待たせちゃダメだ。
あたしから呼び出しておいて…。

 「さ、笹嶋さん。」

 「お、来た。」

笹嶋さんは缶ジュースを片手に立っていた。
…やっぱ、待たせちゃったかな。

 「えっと…すみません、遅れて。」

 「あ、大丈夫だよ。
  別に気にしてない。」

その優しい笑顔に答えを出すのはやっぱツラ
イ。

 「…あの。」

 「…返事、聞かせてくれるの?」

あたしは何も言わずに頷いた。

 「あたし…。」

自分の鼓動。

笹嶋さんに聞かれてないだろうか?

気持ちを声に出して言うって、こんなに緊張す
るものなの?

 「あたしは…。」

…声を絞り出した。