僕はそっと、手帳を開いた。


栞かわりに使っている、鍵を手のひらにのせる。


あの日、彼女がポストに落としていった合い鍵。



渡した時のはにかんだ笑顔が、月日の流れた今でも目の前にある。


体温と金属の温度が同じになった頃、鍵をぎゅっと握りしめた。



「時間だ……」



僕は改札をくぐった。