「蓮、ヒメちゃんの件だけど、ちょっとややこしくなりそうだぞ」
車から出ようとする俺を引き止めるように名波が言う。
俺が調べるように頼んでいた事を報告してくれるようだ。
ドアを閉めてもう一度車内に戻る。
「ややこしくなりそう?」
「ああ。あの男だよ、例の」
「あいつが?……やっぱり何か企んでやがったか」
「みたいだな。どうする?ヒメちゃん辞退させる方向で社長に話すか?」
「…………いや、ちょっと待て。それは姫華がマイナスになっちまう」
そう。
俺はあいつが哀しむのが一番辛い。
この仕事をやると決めた日から、あいつはこの短期間で人の何倍も努力していた。
それを側で見ていたんだから、誰よりもわかる。
馬鹿みたいな話だけど、笑っていて欲しいんだよ。

