ガタンッ。


眠りを誘う心地好い揺れは
緩いカーブを描く所で
少女を夢から掬い上げた。

真山梓【マヤマ アズサ】
夢から醒めきらない彼女の瞳は
宙を泳いで景色を流した。走る箱の中には人で少しだけ混雑していた。


高校1年目を終え、2回目の春を迎える
今日は始業式だ。
そんな節目なのに梓は夢のせいで
身が締まらない。


(夢…か。久しぶりに見た。戻ってなんか、来ないのに。)


黒のベリーショートの髪をぐしゃと握り
梓は自傷気味に笑う。