ただ君だけを想う。

「………」


『海音ちゃん…?』


とにかくあの場から離れようと必死に歩いていた私へ柏木くんが優しい声を掛けたことによって、ハッとした。


足を止めて掴んでいた柏木くんの腕を離した私は、


「海音ちゃんに戻った…」


何てどうでもいいことを呟いていた。


『え、いや…あの時は彼氏として見栄張っちゃったんだ…』


「ほんと、正直者だね、柏木くんは。」


『え…?』


ボソッと呟いた声は柏木くんには届かなかったみたいだ。


「ううん、何でもないよ」


『もしかして迷惑だった…?勝手に来たの』


それが勘違いさせてしまったのか、シュンとした柏木くん。


慌てて私は否定した。


「違うよ!う、嬉しかった…よ?」


『良かった…。じゃあ海音て呼ぶのも嫌じゃない?』


「嫌…じゃないよ」


『じゃー、これから海音て呼ぶ!』


「うん………っ」


私、ちゃんと柏木くんにドキドキしてるよね…?


『海音』


「はい…?」


『呼んだだけ』


ふふっと笑ってそう言う柏木くんにつられて私も笑う。


『海音、』


「…、はい…」


『手、繋いでいい?』


「(確認しなくてもいいのに)」


私は柏木くんの手に、自分の手を重ねた。


『………っ!』


びっくりしたような柏木くんにまた笑みが零れた。


小さなことでも柏木くんは確認してくれる。
優しさを見せてくれる。



私は、そんな柏木くんをきっと好きになる。