「燐花、なくしちゃダメよ。」

「うん」

燐花は汚れたパンダのキーホルダーに鍵をつける。

パパが燐花に唯一買ってくれたものだ。


「ママ、お仕事で遅くなるから、鍵をかけてちゃんとお留守番するのよ?」

「うん…ママ、早く帰ってきてね?」


「ごめんね、燐花。」


母親は夜遅くに帰ることが多くなり、

燐花は買い置きのパンをかじって眠る日々。


それでも母親の前で寂しい顔は見せられなかった。