街中を一人の少女が歩いていた。

楽しそうに歌を口ずさみながら。


手にはバスケットを持ってスキップしながら進むその姿は、まるで童話の中の赤ずきんのよう。

しかし彼女は赤いずきんの代わりに黒のヘッドドレスを身につけ、踏み出すたびに揺れるエプロンドレスも同じ色。

胸で揺れるは金の懐中時計。

時折銀の髪に隠れるはたれた白いウサギの耳。

背中には大きく細長い包みを。

どちらかと言うと、赤ずきんよりもイギリスのとある数学者の書いた物語に出てくる少女と彼女の追いかけた白ウサギのようだった。

彼女の名は物語の中の少女と同じくアリス。


そして彼女は人々の奇異の視線を集めていた。