湿度を含んだ机に、1枚のタオルを隔てて伏せる。
雨の匂い。かび臭い建物。窓は露を纏い、次第に白く曇りだす。
その遮断され始めた世界の境界線に、子供は無表情で手を伸ばした。
「ねぇ?」
急に、声をかけられて大きく肩を振るわせて子供の手は静止した。
「え?」
上ずった声。ゆっくりと振り返れば、また一人だけの子供。
「さっき。」
「ん?」
「何見てたの?」
「何?」
「笑ってたじゃない?そして手を合わせた。」
「あー…気になる?」
子供は意味深に笑って、タオルに頬擦りをしてゆっくり窓を指さした。
「何?」
意味が分からない、ともう一人の子供は首を傾げて白く濁った窓を見る。
「終焉。」
「え?」
人差し指を立てて、窓ガラスに“おしまい”と書いて。
こつんと小さく窓ガラスを叩いた。
「蝉。カラスが食べちゃった。」
思い出し嗤い。子供は再び机に伏せて肩を震わせて笑った。
「……可哀想とか思わないの?」
「!?…なんで?」
想像もしていない言葉に大いに驚いて、ずっと伏せていた頭を持ち上げた。
「かわいそう…」
反芻。