「付き合ってくれたらいいよ。そのほうが助けやすいだろ、梓?」

「なっ……!」

「へぇ、断るってことは名前も知りたくないし、助けたくない。友達になりたくないってことだけど?」



あたしの闘争心に火がついた。
負けず嫌いのあたしは、イラッときて、後先考えずにこう答えた。



「あたしは嫌とは言ってない! むしろ望むところだもん!」

「ふーん。じゃ、さっそく名前教えようか? 俺は折原響<オリハラ ヒビキ>。これからよろしく」

「響、ね」



復唱するように名前を呼ぶと、あたしはかばんのポケットから、ヘアピンを出す。
そして響にわたした。



「なにこれ」

「それで前髪とめんの。いじめられないようになるための第一歩。顔はいいんだから、顔を見せなきゃ」



まぁ、顔見せただけでいじめはなくなると思うけどね。



「こんなもん?」

「違うってば! 変なとめかたしないで! ほら、かがんで!」

「ほら、」



身長が同じくらいになったとき。
また唇に軽い感触。

瞬間、またキスされたんだと知る。


言っておくけど、学校の正門前だ。