呆気に取られながらも車のナンバーを全部記憶して、警察に連絡。 「すいません、彼女が車で連れ去られました」 抑揚も付けずに、淡々と。 ナンバーと現在地、車の向かった方角を教えて早々に電話を切る。 パタッと折り畳んだ携帯電話。 実と繋がれないならこんなもの、役立たずだ。 携帯を折ろうとした手を止めたのは、警察からの折り返し電話。 なにか喋っているけど、聞こえない。聞き取れない。 曖昧に返事をして、また携帯を閉じる。 もう折ろうとは思わなかった。