不完全な、愛。




母親と遭遇した日から少し経ったある日。

記憶が曖昧なのは、俺にとって不利なことがあるからなんだろう。便利な体だな。




…実が、母親とその彼氏的な男に連れ去られた。



公園デートをしていて、実をベンチで待たせて俺一人でジュースを買いに行ったのが間違いだったんだ。


紙コップに入った二人分のジュースを持って、実の待つベンチに近づいて行ったそのとき。



サングラスをした男が、実の腕を引っ張りあげて車に連れ込んだ。

車の運転席には、母親。


ジュースを後ろ手にアスファルトに投げつけ、実の元へ駆け寄る。



「てめぇら…、待てよっ!!」



声が届くはずもなく。

実の軽い体をワゴンタイプの車に押し入れ、車はさっさと発進してしまった。