ー私は炉惟の母親と不意に目が合うと、恥ずかしくなって俯いた。


「あら…この可愛らしいお嬢さんはどなた?」


「ーお母様…この方は、僕を助けて下さった恩人なのですよ。」

炉惟がニコリと微笑むと、「ーーあら、それならそうと早くおっしゃいなさいよ……息子が迷惑をかけたみたいで…ありがとうございました。…貴方お名前は?」


「木下雪詩(キノシタ、ユキシ)です」


「そう…可愛い名前ね。……執事、メイド…ちょっと宜しいかしら?」


パンパンッッ!!…と手で音を鳴らすと、執事とメイドらしき人物が、スッ…と現れた。


「…急で申し訳ないのだけれど…炉惟を助けて下さった、恩人のお嬢さんの為に、おもてなしをしてあげたいですの。…これから作れる範囲内の物で良いから、何か作ってくれないかしら?」

「…はい。かしこまりました。シェフと御相談してみます」

ーそう言うと執事は、スタスタと奥の方へと向かって歩いて行った…。