その日は2月にも関わらず
あまり肌寒くは感じなかった。



まだ固い蕾の桜並木を通り抜けながら、想いは10年前に遡る。



(あと一ヶ月か…)



あと一ヶ月後の3月1日で、彼女を好きになって10年が経つ。



「早いな……」



そう呟いて、俺は駆け足で家路についた。



「ただいまー」



そう言ってドアを開けると
同棲している彼女がパタパタとかけてきた。



「おかえり、啓一!
ねぇ、見て!髪切ったんだけど、どうかな?」