(そうだ、私、怒ってて……)



思い出して、彼を睨み上げた。



他の女が好きなんでしょ?
その女を触った手で私に触れないでよ。



そう言おうと思って口を開きかけたものの、啓一の瞳を見て私は口をつぐんだ。



誰よりも誠実に私を見つめる瞳。



なにかを訴えかけようと、縋るように私を見つめ続ける啓一。



――…『好きな相手の真意も掴めないのなら』



高校生の啓一の声が蘇る。