『…あ、そうだ。君の名は?』 そう尋ねて啓一は私を見る。 『私?わたしは――…』 瞬間、風が強く吹き荒れた。 花びらが舞う。 さっきみたいに思わず私は目をつぶった。 最後に驚いたような啓一の瞳だけが、強く私の胸に残った。 そして風がおさまり、 目を開ける。 するとそこはさっきまでの三分咲きの桜並木の下だった。