その台詞に驚いて 彼を呆然と見つめる。 『……びっくりした。 啓一がお世辞を言うとこなんて今まで見たことないから』 いつだって誰よりも自分に誠実。 人は褒めるけれど、世辞を言うほどお人よしでもない。 それが私の知る啓一だったから。 『……これを世辞と取るなら、貴女も俺をそこまで好きじゃなかったということだ。好きな相手の真意も掴めないのなら』 まだ若い彼の言葉に目を閉じる。 ……ああ、啓一だ。 優しいけど、誰より厳しい、あの人の言葉。