3月1日【短編/企】



その私の言葉に
彼は変な顔をした。



『……そんなはずない。
だって俺にとっては現実なのに』



顔を歪めてそう言う彼が
少しだけ可哀相になった。



少し、妥協してあげてもいいかもしれない。



『……そうなの?
じゃあ私、夢と現実が分からなくなったのね』



呟いてから
私は彼の隣に腰をかけた。



ひんやりとしたベンチの感触が
夢にしては妙にリアルだなと感じた。