3月1日【短編/企】



『……私は怒ってるのよ』



宣言するかのように
私は静かに彼に告げた。



彼は驚いたように
私から目を逸らさない。



『怒ってるの。
だって貴方がなんにも言ってくれないから』



むくれて彼を睨むと
啓一はうろたえたように
読んでいた本を脇に置いてから、
真っ直ぐに私を見つめた。



『えっと……貴女は俺を知っているんですか?』



その戸惑ったような啓一の台詞に
私は一瞬キョトンとし、
そのあとすぐにケラケラと声を立てて笑ってしまう。