『……私は怒ってるのよ』 宣言するかのように 私は静かに彼に告げた。 彼は驚いたように 私から目を逸らさない。 『怒ってるの。 だって貴方がなんにも言ってくれないから』 むくれて彼を睨むと 啓一はうろたえたように 読んでいた本を脇に置いてから、 真っ直ぐに私を見つめた。 『えっと……貴女は俺を知っているんですか?』 その戸惑ったような啓一の台詞に 私は一瞬キョトンとし、 そのあとすぐにケラケラと声を立てて笑ってしまう。