気付けば、彼の前に私は何も言わずに立っていた。 私に気付いて彼も本から視線をあげる。 視線が絡み合う。 変わってないな、と思った。 きっと高校生のときに出会っていても、私は簡単に彼に堕ちただろう。 『……あの、何か?』 先に口を開いたのは啓一の方だった。 訝しげに私を見つめる啓一。 どうやら彼は私を知らないようだった。 (……ねぇ、何でよ) 貴方は夢の中では、私を知らないフリするの? 現実では嘘を吐いて? これは私の夢のはずなのに、そうそう上手くコトは運んではくれないみたいだ。