「……啓一?」 呟いてみた声は信じられない程かすれていて、自分の耳にもよく届かなかった。 端正な顔立ち。 座ったときに足を組むいつものクセ。 真剣に本に視線を落とす横顔。 少し違うのは前髪がいつもより長くて、学ランを着ていること。 (あたしの夢では、啓一はコスプレが趣味なのかな……) それとも、と思い当たる。 (この啓一は高校生……?) 自然と足が彼に向かって歩き始める。 サクサクと歩くたびに鳴る草の感触が心地いい。