3月1日【短編/企】


「………っ!?」



いきなり突風が辺りを吹き抜け、
私は目をつぶる。



しかし目を閉じる瞬間、
一度だけ無数の桜が散って
宙に舞い上がったのが
見えたような、そんな気がした。



桜はまだ三分咲きで
散るはずがないのを頭のどこがでは理解していながら。



そうして風が収まるのを感じて
閉じたまぶたを
再びゆっくりと持ち上げる。



するとそこには。



「こ……こは……」



淡い太陽の光の中、満開の桜が
辺りいっぱいに広がっていた。