「………っ!?」 いきなり突風が辺りを吹き抜け、 私は目をつぶる。 しかし目を閉じる瞬間、 一度だけ無数の桜が散って 宙に舞い上がったのが 見えたような、そんな気がした。 桜はまだ三分咲きで 散るはずがないのを頭のどこがでは理解していながら。 そうして風が収まるのを感じて 閉じたまぶたを 再びゆっくりと持ち上げる。 するとそこには。 「こ……こは……」 淡い太陽の光の中、満開の桜が 辺りいっぱいに広がっていた。