「…あの、瑛奈ちゃんのお知り合いの方ですか?」
「…えっ?あっはい。」
その場に立ち尽くしている陸斗に、通りすがりに話を聞いていた女の人が声を掛けてきた。
「…綾香の母です。
瑛奈ちゃんにはいつも綾香と遊んでもらっていて。
ありがとうございます。」
「綾香ちゃんのお母さん?
あっいえ、瑛奈も綾香ちゃんの話を、いつも嬉しそうに話していますよ。
最近遊びに来ないのが寂しいみたいで。
…綾香ちゃん病室移ったんですか?」
声を掛けた綾香の母親は、力なく微笑みながらお礼をすると、陸斗も笑顔で言った。
「…綾香も瑛奈ちゃんに凄く会いたがっています。
…今は…集中治療室にいるんです。」
「…そうなんですか。」
疲れたように静かに話す綾香の母親に、陸斗はそれだけ返すのがイッパイイッパイだった。
“集中治療室”
それが、何の意味を指すのか、陸斗にでも分かっていた為…
陸斗には何て返せばいいのか正直分からなかった。

