“頑張れ~!”




「…ハァハァハァ…ハァハァハァ…」




観客の応援の中、走る群れに瑛奈はいた。






「…ハァハァハァ…ハァハァ…」




スタートからあまり経っていないのに、瑛奈は既に限界に近づいていた。






「…ハァハァハァ…(足が…)」




中盤を走っていた瑛奈を次々と他のランナーが追い抜いていく…






思うように足が上がらず…




呼吸が出来ずに…




自分の身体じゃない感覚に襲われ、走ろうとする気持ちとは裏腹に…




身体が鉛のように重くなっていた。






「桜井!?どうした!?ペース落ちてるぞ!」




「ハァハァハァ…(駒井先輩?)」




通過地点で瑛奈を待っていた駒井は、瑛奈の異変に気がつかずに声を掛けた。




瑛奈は駒井の掛け声に、意識を朦朧とさせながらも、笑顔を返した。