「…もう無理だよ。」




「…無理って?」




少しの沈黙の後、口を開いたあゆみに、陸斗は静かに聞き直した。






「…別れる。」




「………。」




あゆみのその一言に、陸斗は何も言わずにあゆみの目を見た。






「…結局、私は陸斗にとって2番なんだよ…。

今でも陸斗は瑛奈ちゃんが好き…。

…陸斗と瑛奈ちゃん見てると胸が痛くて苦しくなるの。」




「…確かに、俺にとって瑛奈は特別だし、これからもこの関係は変わらない。

…今日あゆみを置いて行ったのは本当に悪いと思ってる。

……でも、後悔はしてない。」




涙を流しながら話すあゆみに、陸斗は正直に話していった。






「………。」




「…もし、あの時あゆみと瑛奈が逆の立場でも、俺は迷わずあゆみの所に行った。

…でも、結果的にずっと辛い思いさせてたんだよな…
…苦しい思いさせてごめん。」




陸斗はその言葉だけを残すと、あゆみの家を後にした。






陸斗のあゆみへの想いはけして軽いものではなかった。




ただ、陸斗と瑛奈の長い付き合いの上の絆に、どうしても受け入れる事が出来なかったあゆみに、陸斗はそれ以上何も言う事はなかった。