「・・・」
無理に笑ってみせる。
その腕は、誰が見ても驚く程無数の傷。
「ずっと続けてた・・・?」
「うん。誰かに助けてもらいたくて。夏は暑くても長袖の生活を繰り返した。暑くても、我慢し続けた。そんな時に、智美に会ったの。智美とは1年の時、クラス違くて。でもあたしのことは知ってたらしい」
まあひどいいじめだったし。
「ツラくても、絶対泣くのは嫌だった。負けるのが悔しくて、絶対泣きたくないって思ってたんだ。でも、智美が夏休みにあたしをカラオケに誘ったの」
「・・・カラオケ?」
「うん、カラオケ。どこであたしの住所を知ったのかは知らないけど。朝早くに家に来て無理矢理カラオケに誘われて。歌えないって言ったのにいいからって言われて」
「ただ暑かっただけだろ、アイツのことだから」
「あはは。かもね。智美がずーっと歌っててあたしはただ付き添いって感じだったし」
「やっぱりな」
倉井君は笑う。
「でも、終わりがけに智美が作った歌を自分で歌ったの」
「自分で作った歌?」
「うん。そうやって言ってアカペラで歌ったの」
「へぇー。たしかに学校でも知らない歌、いつも歌ってるしな。分かるよ、それは」
「でしょ?」
智美、あの歌、一生懸命あたしのために作ってくれたって言ってたっけな。

